研究概要 |
心肺蘇生での最終的な目的は脳蘇生である. 心停止に陥入った時に脳の血流が杜絶するが, この脳虚血の度合いにより脳の回復は変わってくる. 今回の研究では脳虚血を如何にして定量的に決定できるかの実験モデルを作成するのが最初の問題であった. これは大動脈クランプ法により開胸して大動脈と大静脈を同時にクラープして, 心拍動は止めずに臓器への血流を止めることで, このクランプの時間を任意に変えることで脳虚血時間を5分, 10分, 15分と変える実験が行なえた. 脳局所血流は熱勾配血流計により測定し, 脳組織酸素分圧はクラーク型の電極により測定して, 皮質と深部との2ヵ所でこれの変動を同時記録した. 脳虚血により局所血流及び局所酸素分圧は零にまで下降したが, 虚血解除後は両者とも急上昇を示した. そして時間の経過と共に下降してついには対照値以下にまでなった. 虚血時間が長びけばこの上降の度合いが少なくなり, かつ下降が著じるしくなった. この反応が脳の部位により差がないかどうかをみると, 脳皮質の方が深部よりも脳局所血流の増加が著じるしく, 組織酸素分圧の上昇も著明であった. ショックは全く脳の血流が杜絶した状態ではないので, 脳局所血流も脳識組酸素分圧も零にはならない. 脳血流の自動調節能が働くためであるが, これが機能しなくなるような低い血圧になると, 脳血流も低下してくる. しかし脳血流は均一に脳内で低下するのではない. この病態を脳虚血と比較してみたが, 脳皮質の血流が比較的よく保持され酸素分圧もこれにみあった値をとった. 臨床で脳組織酸素分圧を反映すると考えられた眼瞼結膜酸素分圧のショック, 脳虚血時の変動を脳組織酸素分圧の変動と比較して検討した. 組織酸素分圧とは異なった態度をとることがわかった. 脳蘇生からの病態生理について満足すべき成果がえられた.
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