研究概要 |
1 臨床的研究(田島,牛山担当): 現在まで両側副腎腺腫によるクッシング症候群1例,原発性副腎皮質結節性過形成1例,両側褐色細胞腫1例において副腎皮質自家移植を施行した。すなわち、これらの症例において両側副腎を摘出後、クリーンベンチ上で皮質を分離し、約2-3グラムを大腿筋肉内に細片として移植した。これらの症例のうちで、一応移植片が生着したと考えられるのは原発性副腎皮質結節性過形成例である。これら3症例について移植片生着の条件につき検討した。結論として、ACTH分泌が低下している両側副腎腺腫あるいは原発性副腎皮質結節性過形成によるクッシング症候群では移植皮質片を生着させるのは難しい。それを成功させるためには腺腫の場合は腺腫の一部をも含めての移植、原発性過形成ではできる限り大量の副腎過形成皮質の移植が必要と推察された。ACTHが正常に分泌されている両側褐色細胞腫症例で皮質移植片が生着しなかったのは術直後に過剰のコルチゾール補給をしたためと考えられた。以上の事実を参考にして、今後臨床例について検討する。とくに、ACTH分泌低下症例におけるACTHの投与による生着率の向上、さらに自家移植を行わず副腎皮質の一部をin situに残す方法と自家移植との優劣を研究する。 2 基礎的研究(太田,大田原担当): ラット両側副腎摘除を施行、一部を細片として腹壁筋肉内に移植した。ラットの場合は術後コルチコステロンまたはNaClを補充することにより、副腎は56日で完全に生着した。その間の経過を電顕および3β-hydroxysteroid dehydrogenaseの酵素組織化学的にも検討した。内層の細胞は壊死におちいった後、副腎被膜より細胞が再生し始め、次第に内方に向い再生細胞がのびていくこと、さらにそれらが未熟な細胞から分化した細胞へと移行していくことを確認した。
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