研究概要 |
シクロスポリンの登場により、死体腎移植をふくめた腎移植成績は大きく飛躍した良好な結果が得られるようになった。一方、シクロスポリンの限界も明らかになった。すなわち、腎毒性を有すこと、そして本剤をもってしても制御しえない拒絶反応が存在すること、である。今後、新たな免疫抑制法の開発のためには、拒絶反応のメカニズムが解明されることが必要である。本研究は、これまで拒絶反応に関わりをもつであろう単球群について、新らしく発見し開発したinvitroのassdy法,SPFC-MLC法およびSPFC法を用いて単球と拒絶反応との関係を検討することを目的とした。invitroにおいて、自己赤血球とロゼット形成能を有すT細胞が、SPFC産生を促進する細胞として作用、一方、自己血球ロゼット形成単球と自己血球ロゼット非形成T細胞は抑制的に作用すること、外来抗原としてインフルエンザウイルス,大腸菌,そして同糖抗原もこのSPFC産生に影響を与えることが明らかにされた。拒絶反応との関係について、術前にドナーと施行したMLC-SPFC法により得られたinvitroのSPFC産生能は、移植腎拒絶中の浸潤細胞中に等しく同一反応パターンが再現されていること、そして、移植腎生着率もSPFC非反応群は100%の3半生着率を示し、反応陽性群は高反応例が80.2%,低反応群34.1%と不良であり、シクロスポリン免疫抑制法のもとでも、一定の有意な傾向が認められた。以上の結果から、単球のうち、SPFC陽性単球の動態は、拒絶反応に関わりを有すことが示唆され、今後の免疫抑制法開発の基礎をなすものと判断された。
|