研究概要 |
昨年度は、周産期医療情報の管理に対する問題点を抽出して、マイクロ・コンピュータを基礎としたLAN(Local area network)によるシステムの開発を行い、そのプロトタイプモデルを完成した。本年度は、このシステムを臨床の場に移し、テストランを行って、そこで発生した問題点を検討した。昭和61年6月1日より、テストランを行った当初には、産科外来に2台,病棟に2台,超音波検査室に1台,分娩室に1台,計6台のマイコン端末を設置し、産科のスタッフが診療の傍らでリアル・タイムに患者情報を入出力できるようにした。各端末は、産科病棟に設置した中枢部に接続されており、そこに大容量の臨床データ・ベースが構築されている。本システムを評価するには、コンピュータ・システムの導入により新たに加わった問題点をPatient-Doctor-Machine interfaceの観点から検討する必要がある。まず、Patient-machine interfaceに関してはコンピュータのタイムテーブルやグラフ表示により経過が医師、患者との双方にとって理解し易くなったという意見がある反面、医師がコンピュータに気をとられて患者との対話によるコミュニケーションが少なくなったとの難点もでている。Doctor-machine interfaceについては、ソフトウェア上での配慮による操作の簡易化が功を奏して、産科スタッフの誰もが手軽に取り扱うことが可能であった。入力に関しては、項目が多いために従来のカルテに対するフリードキュメンテーションに比べて2〜3割増しの時間を要している。出力については、個々の患者に自在にアクセスできることはもちろん、データ・ベースを使って全患者に対する条件検索が短時間でできるために、従来のカルテ方式とは比較にならない程便利になっている。以上のような問題点を踏まえて、来年度は本システムを臨床の場で本格的に使用し、そこに蓄積された大容量データ・ベースを用いた各種の臨床データの解析を行う予定である。
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