研究分担者 |
飯田 俊彦 慶大, 医・産婦, 助手
中村 淳 慶大, 医・産婦, 助手
小林 淳一 慶大, 医・産婦, 助手
高橋 守 慶大, 医・産婦, 助手
牧野 恒久 慶大, 医・産婦, 講師 (30085758)
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研究概要 |
本研究は前年度の習慣流産の臨床登録とその臨床解析を引き続き行い、これによって得られた各項目の結果に基いて、不育症の総合的な検索と治療の開発を行うことを本年度は主眼においた。その結果、慶応義塾大学病院における習慣流産の登録患者数も昭和61年12月末に500名に達し、この種の研究の母集団としては、ほぼ満足すべき数に達した。 総合検索としては前年度に続いて、夫婦間HLA typingの解析,夫婦の常・性染色体の分析,子宮内膜の組織学的検査,子宮内腔の細菌学的検査,各種内分泌検査,子宮形態の検査,サイトメガロビールスを含めた催奇形性ビールスの感染の検査を中心に行った。その結果、これら検索から見い出された異常としては弓状子宮・双角子宮・単角子宮・子宮筋腫など子宮の器質的異常が75症例、転座型などを含めた夫婦いずれかの染色体異常が17症例夫婦間のHLA適合症例150組となった。 治療法としては子宮奇型に対する外科的療法,染色体異常に対する正常児出産の確率などを検討するほかに、HLA適合による流産の機序と治療法について検討した。その結果、妊娠成立に関する遮断抗体の存在とその作用を検討するとともに、免疫療法の開発に着手した。夫リンパ球をFicoll conray法によって無菌的に分離し、その濃度を3〜4×【10^7】/mlに調整したのち妻皮内に接種する免疫療法によって150組の免疫療法中、90例が妊娠,42例が分娩,25例が流産の時期を越えて妊娠維持に成功,25例が流産し妊娠維持成功率は69.7%であった。これは対照群の流産率64.7%に比して有意な治療成功率であった。また出生児のfollow upでは出生児の成長に特に異常を見い出しえなかった。 本研究の成果は生殖サイクルの完遂に到らない不育症の臨床に多大な寄与するものと思われる。
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