研究概要 |
耳石性眼球運動系の動特性を明らかにし、臨床での耳石系検査法を確立する目的で動的眼球反対回旋(counterrolling,CR)の記録・分析を行った。 次の2種の検査を行った。a 傾斜椅子検査、被験者を傾斜椅子にのせ左右への振子様回転を行った。b 水平台検査、被験者を水平台にのせ頭部の前後軸を軸として振子様回転を行った。刺激中の頭部・眼球運動を16mm映写器にて毎秒18コマで60秒間撮影し、film motion malizerを用い頭部回転角度、CRを計測した。値はPDP-11に入力し頭部運動を入力、眼球運動を出力として伝達関数(transfer function,TF)を計算した。傾斜椅子検査では半規管系、耳石系が刺激される。水平台検査では半規管系のみ刺激される。前者のボード線図(Bode plots,BP)、すなわちゲイン図、位相図より後者のボード線図を引き、耳石性CRのボード線図をえた。 (1)正常者の半規管・耳石性CRのBPでは、ゲインは0.01Hzより1Hzの周波数範囲で約-4dBで平均、0.1Hz以上では増加傾向を示した。位相は180°であった。半規性CRのBPでは、ゲインは0.01から0.1Hzにて約-10dBで平均、0.1から1Hzで周波数の増加に伴うゲイン増加を示し、1Hzで約-4dBであった。耳石性CRのBPではゲインは0.1Hzを越えると減少した。(2)両側迷路反応喪失例(温度・回転反応喪失)では傾斜椅子・水平台検査とも規則的な眼運動を示さず、耳石反応も喪失したためと判定した。(3)一側迷路障害例で傾斜椅子検査のBPで0.01から1Hzにかけ低ゲインを示した例は半規管・耳石障害と判定した。水平台検査でえたBPで周波数の増加に伴うゲイン増加を示さず、耳石性CRのBPで低い周波数でのゲインが高い例は半規管障害で耳石反応が保たれていると判定した。 以上、半規管性・耳石性動的眼球反対回旋の動特性を明らかにするとともに新しい耳石機能検査法を提示した。
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