研究概要 |
聴・平衡器感覚細胞のシナプス小胞の動態を知る為, 感覚細胞及び神経細胞の三次元的微細構造をOsmium-DMSO-Osmium法を応用して走査型電子顕微鏡で観察した. 60年度はカエル前庭器感覚細胞, 遠心, 求心両神経終末の内部構造とその特徴を捉えた. 又, 求心性シナプス部における, シナプスバーとシナプス小胞の相互関係や, 遠心性神経終末内におけるシナプス小胞とシナプス下槽の形態を立体像として初めて示した. 61年度は, 同様の研究を半規管膨大部陵及びモルモット蝸牛について行った. 一方, 生理学的には, シナプスより前の生理とシナプスより後の生理に焦点をあて, シナプス小胞の動態について研究を行った. シナプスより前の生理学的研究では, 酵素法により単離された蝸牛外有毛細胞にpatch-clamp法を用いて, 細胞膜の性質を検討した. 60年度は, patch-clamp法でも, 主に膜電流固定実験を行い, 感覚細胞の膜イオン透過性を膜電位変化で捉えた. 61年度は膜電位固定実験を行い, 二相性膜電流を記録し, カルシウムイオンとカリウムイオンが膜興奮に重要な役割を演じている事が確認された. これらの実験は微小ガラス電極を細胞膜にあて吸引をかけて膜を破って行うwhole cell clamp法で行われた. 62年度は二相性膜電流から内向き電流を分離記録した. この内向き電流はカルシウム電流と考えられ, シナプス小胞からの伝達物質の放出に大いに関与している事が示唆された. シナプスより後の生理学については, カエル半規管及び平衡斑を用い, 吸引電極法で求心性神経から得られる活動放電の性質を検討した. その結果, 活動放電の反応様式, 受容器としてのシナプスの生理の一面が明らかになった. これらの新知見は, 今後の聴・平衡器の研究において重要な役割をなすものと思われた.
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