研究概要 |
1.病理組織学的研究 声門癌40例, 声門上癌30例, 下咽頭癌47例, 計113例の咽頭全摘出標本についての病理組織学的研究を行った. 主な研究成績は次のとおりである. (1)声門癌では軟骨への浸潤はT1bではなくT2では少数にあり, T3, T4では多い. 声門下に進展するほど軟骨浸潤は多くなる. 声帯運動の制限は甲状披裂筋への浸潤による. (2)声門上癌では喉頭蓋軟骨は高率に犯され, その他の軟骨への浸潤はT2以上でみられた. 声門運動の障害の主因は披裂軟骨周囲への浸潤である. (3)下咽頭癌では軟骨浸潤はT2で少数に, T3以上では高率にみられる. 声帯の固着は披裂部, 傍声門間隙への浸潤によっておこる. 2.機能に関する研究 レーザー手術, 咽頭半側切除術, 声門上水平部分切除術, 喉咽頭部分切除術などを行った症例合わせて175例について, 発声機能, 嚥下機能を検討した. 主な研究成績は次のとおりである. (1)レーザー手術後の発声機能には個人差があるが, 平均的には放射線治療後よりやや劣る. (2)喉頭半側切除術後には声帯以外の部位が代償的に振動する例が多い. (3)声門上水平部分切除術で披裂軟骨を切除すると誤嚥がおこりやすい. (4)喉咽頭部分切除術後の音声はほぼ正常である. 誤嚥は一過性におこる. 3.治療法の研究 喉頭半側切除術後の再発に島状皮弁, 舌骨-胸骨舌骨筋複合弁を利用する方法を考案した. 喉咽頭部分切除術後には皮弁を使う二次再建と, 筋皮弁を使う一次再建術を考案した.
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