研究概要 |
眼に対して前房穿刺や虹彩への光凝固を行うと強い縮瞳、虹彩面上の充血、前房中の蛋白増量が観察される。この刺激症状の極期(2時間後)に前房水を搾取してアラキドン酸代謝物であるプロスタグランディンズ(PGs)を測定するとPGs【E_2】,【F_2】α,共に増量しているが特にPG【E_2】の増量が著しい。PGsの生合成阻害剤であるインドメタシン前投与により刺激症状が非常に弱く抑えられると同時に採取した前房水中のPGsの量が著しく低下していることが認められた。ロイコトリエン(LT【C_4】,【D_4】,【B_4】)も刺激により前房水中で測定できるが症状の程度によるLTsの増減は見られなかった。インドメタシン前投与によってこれらLTsの量には変化はなかった。 PGsの前房内投与により、縮瞳,前房水蛋白量増加がおこるがLTs前房内投与によってはこのような変化は見られなかったがLT【B_4】投与により3時間後より前房水中蛋白増加および白血球増多が認められた。 神経伝達物質であるサブスタンス-P(SP)やバゾアクティブインテスティナルボリペプチド(VIP)も眼刺激時に前房水中に増量した。これら物質の前房内投与によりSPでは強い縮瞳がおこるが眼圧上昇や蛋白質増量はなく、VIP前房内投与では房水中の蛋白の増量はおこるが縮瞳はおこらない。また摘出虹彩を使っての実験よりSPは瞳孔括約筋および散大筋の収縮をおこし、全体として縮瞳するがVIPではむしろ両筋共に弛緩する。 以上の結果より眼刺激時の主たる伝達物質はPGs、特にPG【E_2】が主たるものであり、SPやVIPは刺激症状の一部に関与していると思われる。 眼手術は眼に対する外傷であり、手術時にPGsが生合成され、それによる刺激症状が起こる。インドメタシン前投与によりこの刺激症状が優位に少くなり、臨床伝達も良いことが二重百検法による群間比較により明らかになった。
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