研究概要 |
研究実績の概要を水晶体,角膜の個々につき述べる。角膜:50%ガラクトース含有食にてラットを5〜6週間飼育した。その半数にはアルドースリダクターゼ(AR)阻害剤(M-7.9175)を同時に投与した。対照群は通常研究用飼料で飼育した。ガラクトース血症および正常群ラット角膜におけるAR分布を免疫組織化学的に検索すると両者とも角膜上皮と内皮細胞層が染色された。上皮では両者の分布様式には差があり後者では均一に染色されるのに反し前者では、基底細胞層が強く染色されガラクトース血症ラットでは角膜上皮基底細胞にのみAR活性が上昇することが示唆された。またガラクトース血症ラット角膜上皮基底膜部には、光顕・電顕的観察で点状沈着物や基底膜二重形成などの所見が高頻度に観察された。同時AR阻害剤投与群や正常対照群ではその病変はほとんど観察されなかった。この実験結果から最近ヒトにおいて存在されるとされている糖尿病性角膜上皮障害の状態は、基底細胞の機能異常の結果基底膜部に、病変が生じることがあると考えそれらは、ARによって若起されると推測した。水晶体:25%ガラクトース食を50gラットに投与し以下4種類のAR阻害剤を投与し白内障抑制効果を組織学的に検索した。(1)CT-112,(2)M79175,(3)ONO-2235,(4)ICI128,436.(1)(2)は点眼投与(3)(4)は全身投与である。明確な効果が認められたのは(2),(4)であり、(1)(3)にはほとんどなかった。(2)の点眼液の濃度では0.01〜0.05%の間に、至適濃度があるものと考えられた。また(2),(4)にはいったん成立した白内障も透明化(AR阻害剤-reversal)させる効果があることが判った。形態学的およびAR免疫組織化学的検索からAR阻害剤-reversal)の本質は赤道部で再増殖する水晶体線維の新たなる崩壊防止であると推測した。このことからヒト臨床に応用する場合も若年者により効果大であると考えられる。
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