研究概要 |
唾液線のAlkaline-Phosphatase(Al-Pase)には, 2種類存在する. 1つは成人型の唾液線にみられ, 多くは筋上皮細胞の細胞膜上に活性は存在する. されには種差があり, ヒトや犬には認められず, ラット顎下線に最も典型的な形で存在する. しかし, 同じ〓歯類においても, マウス顎下線においては生後3〜8週の酵素活性の発現の態度で著しく異なることが見出されたが, これはマウスにおいて筋上皮細胞の発生過程が2通りあり, 線房部の他に顆粒細管部にも存在する為であると判明した. 他の1つは, 胎児型で胎児唾液線のTerminal tubule(終末部)の管腔側細胞膜上に認められるものであった. これは, ラットにおいては電気泳動性が成人型とは異なり, またその活性も胎生〜出生直前にピークが存在するアイソザイムと考えられた. 更にこの胎児型は, 種差をこえて存在するようであった. 次の実験として, ヒト唾液線腫瘍(多形性線腫, 線様養胞癌, ワルチン腫瘍, その他)を未固定の状態下で, Al-Pase活性をみたところ, 介在相当部より太い導管系の管腔側上皮の細胞膜を上に認められた. ヒトでは筋上皮細胞に活性は陰性であるところから, これは胎児型Al-Paseと考えられた. しかし, 活性は弱く腫瘍マーカーとして血液内に認められるか否かは現在のところ不明である. 但し, 腫瘍型により活性態度が異なることが, 注目される. 更に, 水溶性レジン色埋を用いた新しいAl-Pase検出の方法(アルコール脱水を行なわず, K4M色埋による薄切々片上で顕鏡する)が考案され, その局在性は従来の方法に勝ると考えられた.
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