研究概要 |
本研究の目的は、4基本味刺激で誘発される味細胞の受容器電位の発生機構を微小電極法で検討することである。実験にはウシガエルのin situの舌を用い、茸状乳頭の味細胞に3MKClの微小電極を刺入して受容器電位を導出した。味刺激として主に0.5M NaCl,1mM HCl,10mM塩酸キニーネ(Q-HCl)及び1Mガラクトースを使用した。NaCl刺激に対する味細胞の受容器電位は、受容膜を覆う表面液から1価か2価の陽イオンを除くと大幅に減少し、基底外側膜を覆う間質液から【Na^+】を除くと同様に大幅に減少した。したがってNaClの受容器電位は味受容膜の陽イオン選択性チャネルと基底外側膜のNaチャネルを通るイオン電流で発生するといえる。HCl刺激に対する味細胞の受容器電位は、間質液中イオンの影響を受けないが、表面液から【Ca^(2+)】や【Na^+】を除去したり表面液に1mM【Cd^(2+)】を加えると大きく減少した。表面液が水でもかなり大きな応答が生じた。したがって、HClの受容器電位の大部分は受容膜のCaチャネルの寄与で発生するが、残部は界面電位の寄与によって発生するといえる。Q-HClに対する受容器電位は、表面液中の【Cl^-】の減少で大幅に増大するが、他のイオンで影響を受けなかった。間質液から、【Na^+】や【Cl^-】を除去したり、同液にフルセミドを加えると、受容器電位は大きく減少した。それ故、Q-HClの応答の大部分は、基底外側膜を通って【Na^+】と【Cl^-】の共輸送で蓄積した【Cl^-】が味細胞の外に分泌されることで発生するといえる。ガラクトースに対する受容器電位は、間質液から【Cl^-】の除去や、間質液に0.1mM DccDを加えると大きく減少した。表面液のpHを低下させると応答は大きく増大した。このことから、ガラクトースの応答は味受容器からの【CH^-】の分泌と関係し、基底外側膜での【Cl^-】依存性【H^+】ポンプが【CH^-】分泌の起電力となると考えられる。
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