研究概要 |
ラット顎下腺の分泌性機能分節である腺房の130KDa(Band【I】)および21.5KDa(Band【IV】)と顆粒管の31KDa(Band【III】)の分泌性糖蛋白分子種を指標として、その分泌動態より14種類の分泌刺激薬の作用点(機能分節)の検索を行なった。刺激薬の顎下腺唾液の分泌動態および糖蛋白泳動像のBandの相対率をみると (1)4種のコリンエステル類では、いずれもBand【I】が大部分を占め、その他わずかのBand【IV】と【III】が同程度にみられた。唾液分泌のpotencyは;カルバコール》ベタネコール≒メサコリン》アセチルコリンの順であった。 (2)ピロカルピン(0.5-4mg/kg)のいずれの用量でもBand【I】がその大部分を占めたが、このBandのintensityは用量依存性に増大した。しかし、このBandの染色性と唾液分泌は、プロプラノロールの前処理で抑制された。 (3)アドレナリン性の【α_1】作働薬ではBand【III】がその大部分を占めたが、【α_2】作働薬ではこの他にBand【I】がみられた。また、唾液分泌は【α_1】》【α_2】作働薬の順であった。 (4)アドレナリン性【β_1】および【β_2】作働薬では、いずれもBand【I】がその大部分を占め、その染色性はコリンエステル類のそれに比べてかなり高かった。また、唾液分泌は【β_1】》【β_2】であった。 (5)ドーパミンでは、いずれの用量でもBand【I】が大部分を占め、次にBand【IV】,【III】の順であった。しかし、高用量(40mg/kg)のドーパミンでは、プロプラノロール前処理によりBand【III】相対量が増大した。 (6)サブスタンスP(0.5-20μg/kg)では、いずれの用量でもBand【I】がその大部分を占め、次に【IV】,【III】の順であった。これらの結果より、コリンエステル類,ピロカルピン,アドレナリン性【β_1】および【β_2】作働薬,ドーパミン(低用量),サブスタンスpは、いずれも主として腺房に、アドレナリン性【α_1】作働薬は、主として顆粒管に、また、ドーパミン(高用量),アドレナリン性【α_2】作働薬は、腺房と顆粒管の双方に作用することが明らかとなった。
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