研究概要 |
歯周疾患の治療効果を客観的かつ総合的に判定するための基礎的資料作りを目指して以下の研究を行った。1.初期治療による歯肉の炎症の軽減がどの様に歯槽骨の改善に影響を及ぼすか光学的サブトラクション法を用いて検索したところ、歯槽骨の改善の出現する時期及び程度は歯肉の炎症の程度に影響を受けることが示された。また、動揺度の測定にはベリオテストを用いて検討した。2.歯周疾患を白血球機能の面からとらえる目的でダウン症候群患者について好中球走化能を測定し健常者と比較したところ,ダウン症候群患者では一般健常者と比べて好中球走化能が低下していた。また、走化能が低下している患者では歯周疾患の進行が認められた。3.スピロヘータを含めた歯肉縁下プラークの細菌叢の検索に適した培地,培養法を検討した。その結果、非選択培地としてはSteel-wool法を用いたEG寒天培地が適しており、スピロヘータの培養については,Plate-in-bottle法を用いた10%rumen液入りMedium10培地が優れていることが示された。4.歯周病関連菌と考えられている7種の口腔細菌に対する血清IgG抗体価をELISA法により測定し,歯周疾患の進行度との関連性および治療後の変化について検討した。その結果,B.gingiualisに対する抗体価は歯周疾患の進行程度と高い相関を示し、歯周治療後有意に低下することが認められた。5.歯周疾患を生体反応の面から解析する目的で57人の重度歯周炎患者の血清IgG抗体価を調べた。その結果、B.gingiualisの抗体価は91.3%が高い値を示し、多くの症例ではこの菌とA.actinomycetemcomitansのいずれかを含めた1種あるいは数種の他の菌に対する高い抗体価が同時に認められた。一方抗体価が抑制されたものが5.5%に認められ、これらの患者では同時に好中球走化能の低下が認められた。この事から、重度歯周炎患者では、生体反応の多様性が示唆された。
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