研究概要 |
1.培養腫瘍細胞のGa-67取り込みに及ぼす抗癌剤の影響:現在、臨床で広く利用されている抗癌剤であるadriamycinの作用について検討した。マウス白血病細胞の増殖は、adriamycin(0.01μg/ml〜1.00μg/ml)によって、明らかに抑制され、その抑制はadriamycinの濃度に比例した。しかし、adriamycin処理細胞へのGa-67およびFe-59の取り込みは、かえって対照より増加した。また、この取り込みの増加は、adriamycinの処理時間と濃度により変化した。さらに、抗癌剤であるactinomycinDについても同様に実験したところ、細胞増殖はadriamycinと同様に抑制された。しかし、Ga-67の取り込みは、adriamycinと反対に対照より減少した。つぎに、これらの抗癌剤の腫瘍細胞の細胞サイクルに及ぼす影響をFlow cytometryで検討した。その結果、adriamycin処理細胞の細胞サイクルは、【G_2】+M期に蓄積することが判明した。しかし、actinomycinDによって細胞サイクルは変化をうけなかった。さらに、走査型電顕によって、adriamycin処理細胞の表面をみると、対照に比べて細胞の大きさは増大し、細胞表面の微絨毛は消失し、表面の波状構造物が破壊されていた。 2.細胞骨格とGa-67の取り込みの関係:(1) 細胞膜蛋白質を分解するtrypsin,α-chymotrypsin,SH基阻害剤のN-ethylmaleimideを作用させ、腫瘍細胞へのGa-67取り込みに及ぼす影響をしらべた。Ga-67の取り込みは、trypsin,N-ethylmaleimideで明らかに抑制された。以上から、細胞膜蛋白質がGa-67の取り込みに関与していることを知った。(2) 細胞骨格系の阻害剤のうち、マイクロフィラメントを脱重合するcytochalasinB,微小管を脱重合するvinblastine,colchicineを作用させた。そして、電顕により細胞骨格の形態とGa-67の取り込みの関係を検討した。その結果、細胞内のGa-67の輸送には、マイクロフィラメント束が関与していることを知った。
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