研究概要 |
エナメル質にAOQ-Sw,Nd:YAGレーザを照射した際のエナメル質内有機質の変化を調べることを目的に次の実験研究を行った。実験1.矯正治療のために抜去し、70%アルコール溶液中で保存した幼若小臼歯の頬舌面に墨塗布後、AOQ-Sw,Nd:YAGレーザ照射(78J/【cm^2】)後、約50μmの研磨切片を作成し、0.5M乳酸(10%ホルマリンを含む。)で5分間脱灰した後H-E染色を施した試料と、脱灰せずにH-E染色を施した試料の両者について光学顕微鏡にて観察したところ、前者はレーザ照射部位の表層から半円状に約100-300μmの深さまで染色性の悪い部分があるが、後者では照射部と非照射部の間に染色性の違いが認められなかった。また、両者共レーザ照射部直下にレチウス線に一致したシワが認められたが、これはレーザによる亀裂と思われた。さらに、研磨面の脱灰後の状態をSEMで観察したところ、非照射部や照射部の深部はエナメル小柱構造が鮮明に認められたのに対して、照射部直下には小柱構造が殆んど認められず、脱灰程度の低いことが確認された。実験2:実験1の材料と同様に保存した幼若小臼歯の表面から約1mmの厚さのエナメル片を作成した後、その表面を研磨及び洗浄し、両面に墨塗布後AOQ-Sw,Nd:YAGレーザ照射した。墨除去後3mgのエナメル片として6N塩酸0.5mlを加えて加水分解し、その後100倍に希釈した溶液を陽イオン交換樹脂に添加し、さらに20mlの3Mアンモニア水にてアミノ酸の溶出をはかり17mlを回収した。この溶液を蒸発乾固して得た試料500μlにクエン酸ナトリウム緩衝液を加えてろ過した後アミノ酸分析機にて測定したところ、検出された全てのアミノ酸がレーザ照射により顕著に減少する傾向が認められた。これらの実験により、エナメル質にレーザを照射するとエナメル質中の有機質は少なからぬ影響を受け、そのことが耐酸性増加に何らかの役目を担っていることが示唆された。
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