研究概要 |
う蝕経験(DMF)指数は頬舌側の歯垢量(D.I)とは相関しないことがしばしばであるが、咬合面歯垢指数(O.P.I.)はDMF指数との間に高い相関関係が認められている。しかしなぜ咬合面の歯垢量がう蝕経験と関係が深いかについては検討が尽くされたとはいえない。本研究は上下顎歯の咬合による接触が咬合面歯垢量を決定する大きな要因であるとの仮設のもとに小学校学童についてO.P.I.を測定し、同時に不透明ワックスを咬ませて咬合状態を印記した。この印記板を透過光線で観察して得られた透過像は上下顎歯へ咬合接触状態を反映するものである。印記板の透過像を画像解析装置に入力して咬合接触面積の自動的な算出の体系を確立した。さらに、咬合接触状態を画像として記録することは上下顎歯の咬合状態,位置関係の解析に必須であるため、この記録法について検討を加えた。その結果、ディスプレイの信号をビデオコピープロセッサーに入力してコピー画像を作成する方法が効率的で、また画像の保存にも耐えられることが判明した。以上の確立された方法にもとづいて対象児童の咬合接触状態と咬合面歯垢量の経年的観察を行った結果次の結果が得られた。1.8歳児の2年後平均咬合接触面積の比は平均0.99で、増齢に伴って面積が必ずしも増加しない。2.この原因は乳歯の脱落に伴う接触面積の減少で、後続永久歯による補う速度が十分でないことで説明された。3.全顎では咬合接触面積は時間の経過につれて増加しないが第1大臼歯は接触面積が点から面へと増大する。4.この2年間にO.P.I.値は1人平均1.1から0.6へと減少した。以上のことからこの年齢においては第1大臼歯の咬合接触面積の増大につれてO.P.I.の減少がおこることが判明した。しかし永久歯列の完成に伴って咬合接触面積がどのように推移するか、さらに次年度の調査資料をもとに解析を深め、咬合接触面積とう蝕との関係を解明する予定である。
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