研究概要 |
1.わが国における歯周疾患の実態:抜歯の原因調査により, 歯周病による抜歯は, 全体の38%であることが示された. しかも, 45歳から54歳では, 歯周病が抜歯原因の第一位であった. 高齢化社会の到来とともに, 今後歯周病による抜歯の比率は, さらに上昇することが予想される. 一方, 歯周病罹患者率を, 大学新入生, 農山村地区住民, 水道局職員, 百貨店従業員, 等総合計5,100人について, WHOの提唱したCPITNを用いて調査した. 大学生においては, 98%の有病者率で, 重症と診断された者は1.2%であった. 水道局職員(38.9±9.0歳)の有病者率は96%で, 重症者は1%, 農山村地区住民(53.9±11.8歳)では99%の有病者率で, 重症者は19%であった. いずれの集団においても, 日本の成人は95%以上の罹患者率で, 増齢と共に重症化することが示された. 2.CPITNの有用性:CPITNによるスクリーニングでは, 被検者の95%が有病者となり, スクリーニングの意味をなさない. そこで, 重症者のみをスクリーニングするために, CPITNの規準をcode4にして, 臨床精密検査と対比させた. その結果, 20歳代では, CPITNを歯周病のスクリーニングとして用いるのは不適当であることが示された. 3.歯周疾患予防のための公衆衛生学的アプローチ:歯周病の予防, 治療において, ブラッシングの効果が大きいことは臨床では明らかにされている. ブラッシングを公衆衛生学的に応用してみたところ, 1年経過後もほぼ全員に有効であることが示された. また, 330名の歯科検診と同時に実施したブラッシング指導の効果を1年半後に評価したところ, 発赤, 腫脹, 歯周ポケット, 歯肉出血の全ての項目で有意に改善したことが明らかになった. 以上のことより, ブラッシング指導の効果は明らかとなったが, コストパフォーマンスについて今後の検討が必要である.
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