研究概要 |
1.研究目的:炎症のケミカルメディエーターと言われながら十分な証拠のなかった様々の生体物質について, 本研究者が開発した各種の空気嚢型炎症モデルを活用して炎症反応における役割を確定する. 2.研究成果:(1)カラゲニン炎症:空気嚢内にカラゲニン溶液を注入後1.5時間まで局所のブラジキニン(BK)濃度と浸出反応に平行関係がある. BK生成酵素阻害剤によりBKレベルは測定限界以下に低下し, これと共に血漿浸出も著しく低下する. またBK分解酵素阻害剤によりBKレベル, 浸出反応ともに著しく上昇する. これらの結果からカラゲニン炎症の初期相ではBKが浸出反応のケミカルメディエーターであることが確証された. (2)カオリン炎症:カオリンを0.8%CMC溶液に懸濁した液を空気嚢内に注入するとカリクレインキニン系の活性化により生成するBKが浸出反応を誘発することが確証された. (3)アレルギー炎症:ラットのI型アレルギー炎症の即時相(アナフィラキシー相)の浸出反応を独占的に支配しているのはヒスタミンとセロトニンでありプロスタグランジンやロイコトリエンは関与しない. ヒスタミンは一旦低下したのち惹起8時間後より再び上昇し24時間で第2のピークに達する. アナフィラキシー以後相におけるヒスタミンの再度の上昇は浸出反応には一切関与しておらず好中球浸潤を抑制する因子として働いている. これと関連してシクロオキシゲナーゼ阻害薬の好中球浸潤抑制は炎症局所のPGE2レベルの低下によりヒスタミン産生が上昇し, 好中球浸潤の抑制が強められるためであることなどが明らかになった. (4)ザイモサン炎症:或る種のバクテリアのモデルとも考えられるザイモサンによる炎症反応の即時相ではヒスタミン, セロトニンが主役でロイコトリエンは産生されるものの浸出反応には関与しないことが明らかとなった. (5)CMC炎症:CMC溶液は起炎作用が微弱で好適な保持剤である.
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