研究概要 |
前年度は、ラット全脳より抽出,精製したmRNAを移入されたアフリカツメガエル卵母細胞が、アセチルコリン(ACh)やセロトニン(5-HT)に反応して【Cl^-】電流を誘起すること、この反応にGTP結合蛋白(Gt/Go)の関与することを示した。これらの成果を踏まえて今年度の研究を行い、以下の結果を得た。 1)ACh/5-HT反応に関与する二次メッセンジャーを同定するため、細胞内cyclic AMP(cAMP),inositol 1,4,5-trisphosphate(I【P_3】)を定量したところ、ACh/5-HTによる電流反応と同期してI【P_3】が有意に増加した。2)35pmol・cAMP,35pmol cGMP,35pmol 1-oleoyl-2-acetyl-glycerol(OAG),35pmol I【P_3】,70pmol 【Ca^(2+)】を細胞内適用したところ、cAMP,cGMP,OAGでは全く電流応答は認められなかったが、I【P_3】,【Ca^(2+)】では一過性に内向き【Cl^-】電流が誘起された。3)35pmol GTPとS,35pmol GTPの細胞内適用によっても【Cl^一】電流が誘起された。4)ACh/5-HT電流反応は、70pmol GDPβs,0.3nmol neomycin細胞内適用により有意に抑制された。5)【^(32)P】-NAD存在下、卵母細胞模を百日咳毒(IAP)処置すると、39k/41kの蛋白が【^(32)P】-ADP-リボシル化されたが、その程度は脳mRNA注入群の方が未注入群よりも強かった。6)phorbol ester(12-o-tetradecanoyl phorbol 13-acetate(TPA)で予め卵母細胞を処置すると5-HT反応は有意に抑制された(50%抑制濃度:58nM)。以上の結果より、脳mRNA移入卵母細胞は、AChおよび5-HTに反応して内向き【Cl^-】電流を生じるが、この反応機構にはGt/Goが関与しこれに上り産生するI【P_3】が細胞内の【Ca^(2+)】を遊離し【Ca^(2+)】が【Cl^-】チャネルを開くことであることを明らかにした。ホスファチジルイノシトールより産生されるもう一つの産物ジアシルグリセロールがC-キナーゼを活性化しACh/5-HT受容および/またはGt/Goをリン酸化したACh/5-HT反応の脱感作が生じる可能性が考えられた。
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