研究分担者 |
久下 理 国立予防衛生研究所, 化学部, 研究員 (30177977)
天野 富美夫 国立予防衛生研究所, 化学部, 主任研究員 (90142132)
田中 康仁 国立予防衛生研究所, 化学部, 主任研究員 (30113484)
北川 隆之 国立予防衛生研究所, 化学部, 室長 (80092188)
西島 正弘 国立予防衛生研究所, 化学部, 室長 (60072956)
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研究概要 |
本研究の目的は動物培養細胞よりリン脂質代謝に異常を有する変異株を分離し, これを用いてリン脂質生合成とその調節機構及び膜の生合成並びに膜機能発現におけるリン脂質の役割を明らかにすることである. 1.CHO細胞よりホスファチジルセリン(PS)生合成欠損変異株を分離し, PSの生合成はリン脂質コリン塩基交換酵素により触媒されていること, およびPSは細胞の成長に必須であることを明らかにした. 2.PS要求性変異株を分離し, 動物細胞には基質特異性の異なる2種類のセリン交換酵素(酵素IおよびII)が存在することを初めて明らかにした. またセリン交換酵素Iの欠損で細胞内PSの量が減少し細胞が死滅することを見いだし, この酵素の重要性を明らかにした. 3.この変異株を用いた解析によりPSが被膜RNAウィルス感染過程において重要な役割を果たしていることを明らかにした. 本研究及び当研究室での動物細胞変異株を用いたタンパク質輸送・分泌の研究結果などを併せ, 今後ウィルス感染防御法確立のため役立てたい. 4.PS生合成調節機構が異常となった変異株(#29)を分離し, 親株のPS生合成は培地にPSを加えると特異的に抑制されるのに対し, #29株ではその抑制を受けないことを明らかにした. #29株のPS生合成調節機構に於ける損傷部位を検討している. 5.PSA-3株のPS要求性を相補する遺伝子をCHO細胞より単離し, この遺伝子のPS生合成への関与を明らかにして更に解析中である. 6.マクロファージ系培養株細胞よりホスホリパーゼA_2活性損傷変異株を分離した. 親株及び変異株のアラキドン酸とその代謝産物遊離について解析し, 本細胞株に基質特異性の異なるホスホリパーゼA_2が少なくとも2種類存在することを明らかにした. またリポ多糖刺戟後のアラキドン酸遊離に関与するこれら酵素は, 異なる活性調節を受ける可能性を示唆することができた.
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