研究概要 |
血圧維持と体液バランスの保持に重要な役割を果しているアンジオテンシンII(AII)に対するリセプターの構造解析を行い以下の成果を得た. (1)アンジオテンシンIIリセプター(AIIR)が比較的多く存在するウシ副腎皮質の膜画分より, 目的とするリセプターを界面活性剤を用いて可溶化し精製を試みた. DEAE-Toyopearlによるイオイ交換クロマト, Phemyl-セファロースによる疎水性クロマトおよびWGA-セファロースによるアフィニティークロマトグラフィーを組合せて用い, 電気泳動的にバンドが確認できるところまで精製した. アフィニティーラベリング法によって求めた分子量は, 約17万であり, ラディエション・イナクチベーション法によって求めた値14万とよく一致した. (2)AIIRは活性発現に重要なSS結合を有し, 還元剤処理によって容易に失活することが明らかになった. (3)等電点やPH安定性, さらにはリガンド結合部の構造に関しても興味ある結果が得られた. (4)AIIRの完全精製のためには, AIIをリガンドとするアフィニティーゲルの開発が不可欠であるが, 最近, 私たちはポリ(D,L-アラニン)をスペーサーとすると, かなり性能のよいアフィニティーゲルを作ることができることを見い出し, 実際にAIIRの精製に応用中である. 血圧調節のしくみを理解するためには, AIIとは逆の働きをする心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の作用機構をも解明しなければならない. 本研究では, ANPリセプターに関する研究をも進め, ウシの肺よりANPリセプターを単離することに成功した. 精製品は, 70〓Daのサブユニット2個がジスルフィド結合した140〓Daの糖蛋白質であることが明らかになった. これをウサギに免疫して得た抗体を利用して, ANPの関与する情報伝達系の解析を行った. 免疫組織化学的にリセプターの局在部位を同定すること及びcDNAをクローニングすることにも成功した.
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