研究概要 |
末稍血リンパ球のPHA添加による短期培養の末期にaphidicolinを加えると脆弱部位が高頻度に発現し,これがethanolの添加により増強することは前年度発表した. 從来,脆弱部位の研究に用いられている組織は末稍血リンパ球が主で,他の組織は殆ど研究されていない. 皮膚線維芽細胞の脆弱部位を調査した. 方法:健康な成人5人(男2人,女2人)の末稍血リンパ球短期培養,皮膚線維芽細胞の培養に0, 2μM aphidicolinを26時間添加し,染色体標本を作製,脆弱部位の頻度を求めた.線維芽細胞にのみ認められたのは7g11.2,10g11.2である.両者に認められるが,線芽細胞に圧倒的に多いのは1p31,3g26.2,16g23だった. 他方,リンパ球に多い3p14,2g32,11g14,6g26は線維芽細胞では殆ど観察されなかった. 脆弱部位全体としてはリンパ球は100細胞あたり3.12,線維芽細胞は22で,ほゞ1/14だった. 考案:上記の所見から,組織により脆弱部位の発現頻度,部位の異なることが判明した.細胞のDNA構成は組織の如何にかかわらず同じだから,脆弱部位はDNA構成そのものを反映していないと結論できよう.aphidicolin以外の条件で皮膚線維芽細胞に脆弱部位を多数発現させることは困難なので,種々の条件を比較することは難しい. また,骨髄細胞,羊水細胞,羊膜の上皮細胞についても將来検討の必要があろう.
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