研究概要 |
炎症の進展における水構造変化の役割を明らかにする目的で比較的慢性的に病態が変化進展していく異物刺激による肉芽増殖炎モデルを用いて水構造に関する検討を行った。そのパラメタとしては組織結合水の縦緩和時間および組織にラジオ波照射した際の水への磁場の飽和移動に関する時定数として表わされる組織から水への交叉緩和時間を360MHZ,【^1H】-NMRにて測定した。炎症性肉芽組織はラット背部皮下に直径約1.2mm,長さ3cmの線糸を埋没することにより作製した。測定結果はウシ血清アルブミンのヅル・ゲル状態ならびにラット肝腫瘍組織などで得られた成績と比較した。炎症性肉芽組織の湿重量は埋没7日後に最高値を示し、以後14日目まで減少しついで一定となった。乾燥重量は埋没3日後より7日後まで上昇し、以後一定となった。NMR測定による両パラメタは綿糸埋没後2日目、すなわち急性炎症進展期で最大値が得られ、湿重量が最大となった7日目より大きかった。特に交叉緩和時間の変化量は著明であり、この変化は血清アルブミンのゲルからゾルへの変化、あるいは肝腫瘍組織とか再生肝組織で認められた変化と同質の水構造変化に基ずくものと考えられた。なお交叉緩和時間はsaturation transfer法とinversion recovery法で測定したが、後者の方法で比較的高精度のデータが得られたことから、本法による交叉緩和時間測定は炎症組織における水構造の検討に有用であると考えられる。現在、抗炎症活性を持つ化合物,薬物などん投与した時のこれらパラメタの変化を検討している。あわせてこの水構造変化が細胞レベルにおける反応の何に最も依存しているか検討を続けている。またラット再生肝モデルが有用であったので臓器炎症モデルへの【^1H】-NMRの応用を考慮中である。
|