研究概要 |
東京都中央区に在住する35〜60歳の女性を, 住民台帳より無作為抽出し, 無記名式質問紙郵送法を実施し, 420通の有効回答を得た. 閉経年齢の平均は51.2歳で, 90%の人が45〜55歳の範囲に含まれていた. 閉経前, 進行中, 終了後の各期の心身の不定愁訴と閉経の受容との関係および影響する要因について分析した. 最近の2週間における心身の不定愁訴を48項目の症状に関して有するか否かを尋ねた. 90%以上の者が何らかの症状を有し, 全対象者で全身性症状(疲れやすい), 運動器系症状(首, 肩のこり腰痛), 精神活動系症状(忘れっぽい)が多く, 閉経を間近に予測しているグループには, 神経内分泌系症状(月経不順, のぼせ, 知覚過敏)が有意に多かった. 症状を7ヶ以上もつ者では生活上の支障を感じている者が多く, 症状が苦痛である, 症状と仲良く暮そうと感じている者が多かった. 全体として閉経・更年期の捉え方は「自然な出来事である」, 「不快な自覚症状なしに過せる」, 「月経がなくなり楽になる」と肯定的であった. しかし, これから閉経を迎える前群では更年期は心身の不調を伴うものと回答している者が多いのに比べ, 後群では伴わないを選んだ者が多かった. 以上の結果から, 対象集団は, 生活上に多少の支障がある症状を有しており, 閉経を肯定的に受容している者が多く, 一方, 少数の援助を必要とする婦人も認められた. 閉経の受容に影響する因子としては, 年齢, 自覚症状の数, 日常生活上の悪いでき事数, 自尊感情, 女性役割指向性, 閉経への態度が抽出された. また, 今後にむけて, 閉経前の健康婦人への教育とともに, 症状が多く, 生活上支障を感じている婦人に対し, 専門家による相談の必要性が示唆された.
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