研究概要 |
1.わが国の実験小動物コロニーを対象として、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルスの蛍光抗体間接法を応用した血清疫学的調査研究を行った結果、SpFマウスで3/152(2.2%),コンベンショナルマウスで37/662(5.6%),シリアンハムスターで2/89(2.2%),カヤネズミで3/14(21.4%)の抗体陽性動物を検出することができ、殴米同様にわが国でも実験小動物でLCMウイルス感染が存在することを示唆した。一方、スナネズミ(46),スンクス(17),モルモット(31),ラッット(70)類では陰性結果におわった。 2.マウス類を主体とした関東以西地域の野鼡類血清についても血清疫学的調査範囲を広げた結果、19/222(8.6%)の陽性動物を検出することができ、しかも比較的高い抗体価を示す個体を認めた。このことは野鼡類から実験動物コロニーへ感染の侵襲の可能性を示した。 3.マウス,モルモット,ハムスターへの感染実験の結果、本研究に使用したウイルス株はマウス,モルモット等に対し強毒性であり、脳内接種後約7日目をピークとして間代性痙摩発作,後肢の強直伸展を主症状とした致死性ウイルスであった。しかし、ハムスターに対しては非致死性であったが、体重減少を顕著に示した。 4.感染マウス脳を病理学的に検索した結果、脳室脈絡業に単核球の浸油を全例認めたが、ニューロファギア、封入体形成、あるいは神経細胞の核崩壊・融解像は認められなかった。これらのことから、ウイルスが脳内で増殖してもほとんどニューロンを破壊しないか、またはそれに対する親和性が弱いと考えられる。 5.非致死的であるハムスターでの感染後の経時的血中抗体産生をみたところ、接種後既に3日で抗体価は検出可能であり、1週間後にはほぼピークに達し、更に少なくとも3ケ月迄持続した。 6.ウイルス分離試験は陰性結果に終ったが、方法・材料に検討の余地を残した。
|