研究概要 |
非運動性の筋萎縮のメカニズムを分子及び細胞レベルで明確にするため、筋ジストロフィー症モデルマウス(C57BL/6NJ)のホモ型(dy/dy)とヘテロ型(dy/?)を用いて、生化学的及び組織学的な測定と解析を行なった。そして、得られたデータを相互に比較・検討し、以下の知見を得た。 【1】細胞分画法により、萎縮が筋細胞のどの画分で特異的に発現するかをしらべた。1.2MKclで溶出される【I】画分(主に収縮タンパク質)のタンパク質量は、萎縮筋の方が非萎縮筋に比べて著明し低下していた。一方、低張塩溶液(25mMリン酸緩衝液,pH7.4)で溶出される【II】画分(主に膜酵素や膜タンパク質)や塩類溶液で溶出されない【III】画分(コラーゲン等の組合組織)のタンパク質量も、萎縮筋が非萎縮筋に比べて有意に低下した。 【2】萎縮筋における各画分のタンパク質成分の組成比は、非萎縮筋のそれらの比に比較して著しく異なることが各種の電気泳動の分析から判明した。 【3】筋細胞内の核酸(デオキシリボ核酸〈DNA〉,リボ核酸〈RNA〉)量は、筋の萎縮の程度がより進行すると著明に増加した。また、組織学的検索により、細胞1個あたりの核の数が有意に増加することを認めた。さらに、DNA1個あたりのタンパク質含有量は、筋の萎縮によって著しく低下した。このことは、筋の萎縮によって1個あたりの筋細胞のサイズが小さくなること、即ち筋の細胞容積が小さくなることを示している。同様な現象を組織学的なデータ(筋細胞の断面積及び縦断面の解析)からも得た。 【4】本研究により、筋の萎縮の指標として以下のパラメータが得られた。1)DNA量に対するRNA量の比, 2)DNA量に対するタンパク質量の比, 3)RNA量に対するタンパク質量の比,および 4)筋タンパク質量の各分画(【I】〜【III】)の比。
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