研究概要 |
糖鎖構造を識別して結合するタンパク質であるレクチンは、単細胞生物から哺乳類に至るまで広く分布しており、さまざまな重要な機能を営んでいることが最近明らかにされてきている。しかし、これまで主に糖タンパク質や糖脂質に結合するレクチンが研究対象とされており、もう一群の複合糖質であるグリコサミノグリカンと特異的に結合するレクチンの検索・研究は未だ極めて少ない。 本研究では、ニワトリ肝をはじめとして、カブトガニ体液,カイコ体液および哺乳類腎を材料とし、グリコサミノグリカンに特異的なレクチンの生物学的意義を解明するための基礎として、次の成果を得た。 (1)グリコサミノグリカン特異的レクチンを精製するには、グリコサミノグリカン固定化カラムが有効であった。その吸着体の調製法として、エポキシ活性化担体を反応性にとむアミノ担体又はヒドラジノ担体とし、これにグリコサミノグリカンを還元末端で短時間に効率よく固定化する条件を確立することができた。 (2)グリコサミノグリカンとレクチンとの相互作用を定量的に研究するには、ニワトリ肝,カブトガニおよびカイコ体液レクチンの場合には、蛍光差スペクトル法が有効で、弱い相互作用についても親和定数を再現性よく求めることができ、特異性を詳細に比較検討することができた。 (3)哺乳類の腎臓に共通に存在するヘパリン結合性レクチンを初めて見出した。これはニワトリ肝レクチンの場合と同様に界面活性剤非存在下に抽出されるので細胞表面にあってグリコサミノグリカンを介した細胞接着や細胞間マトリツクス形成に関与していると考えられる。 今後、これらのレクチンに対する抗体を作成し、より直接的に生物学的意義を追究する必要がある。
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