研究概要 |
本研究では, X線高感受性細胞を材料とし, 高感受性と密接に関係している現象の解析および高感受性を支配する遺伝子の単離によって, 機能および遺伝子の両面から, X線による細胞死のメカニズムを明らかにすることを目的とした. この目標に向けて4つの柱を設定し, 並行して研究を進めた. 1.X線高感受性変異株の単離. 培養細胞に変異原処理を施し, X線に対して高感受性を示す異変細胞の単離を試みた. マウス培養細胞(L5178Y)に関しては, 野性株よりも有意に感受性の高い異変株が得られた. 2.DNA切断を指標としたX線高感受性細胞の性状解析. X線高感受性遺伝病であるAtaxia telangiectasia患者由来の細胞(AT細胞)を材料としてX線誘発DNA切断とその修復の様子を調べ, 正常細胞の場合と比較した. AT細胞と正常細胞の間に, DNA切断の誘起およびその修復の様子に関して差異は認められなかった. 3.性状解析に役立つ新たな系の開発. 特定の遺伝子に対するプローブを用いて, 照射後の細胞からDNAを単離し解析することにより, ひとつの遺伝子のレベルでDNA損傷および修復について調べる系が確立された. 4.放射線感受性遺伝子単離系の検討. 放射線感受性CHO細胞に, 外部よりヒトの遺伝子をDNAの形で導入することによって形質転換させ, ヒト固有の反復配列を目印として, 形質転換遺伝子を同定し単離する系の有用性が確認された. 本研究を通じて得られた変異株, 新たな知見そして有用性が確認された系を組み合わせて, 細胞死のメカニズム解明へ向け総合的に研究を進めていくことが今後の課題である.
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