研究概要 |
Fanconi貧血症(FA)細胞がマイトマイシンC(MMC)に超高感受性で、クロスリンク修復を特異的に欠損することを明らかにしている。本研究では正常ゲノムDNA導入によるFA細胞の形質転換と全cDNAを作成し、その導入による形質転換の研究を行い、FA細胞のMMC高感受性を支配する修復遺伝子をクローニングすることを目的とした。2ケ年の研究成果は次の通りである。 1.HeLa DNA導入と形質転換,FA14JTO線維芽細胞にゲノムDNAを導入し、一次MMC選択で【10^(-5)】/μg頻度の生存コロニーを得、二次選択で正常感受性クローン多数を得た。非導入では復帰変異を認めなかった。増殖のよい選択8クローンの中、7株は老化し、安定な1株FA14t【II】3を得た。この細胞は正常細胞と同じMMC感受性とクロスリンク修復能を示した。この転換ゲノムDNAをクローニングするために、40kbSal【I】断片をneo遺伝子と連結導入し、neo-MMCの2回選択を行ったが両形質をもつ転換クローンは得らなかった。 2.cDNAライブラリーの作成と導入による形質転換,正常細胞のpoly【A^+】mRNAに相補なcDNAライブラリーを岡山・バーグ法でpcDベクターを用いて作成した(pcDHF)。大量のFA細胞GM6914にpcDHF DNAを導入し、2回MMCで選択し多数の転換クローンを得た。pcDベクーターを組込んだ安定転換クローン4株を最終的に獲得した。その中、最良のFApcD5102-8クローンのゲノムDNAの20kbSau3A【I】断片をEMBL4ライブラリーとし、スクリーニングとGM6914への導入によってMMC抵抗性を与える1ファージクローンを単離した。したがって、FAのMMC感受性を支配するcDNA遺伝子をクローニングすることができた。今後、このcDNA遺伝子の塩基配列の決定と遺伝子産物の同定、この遺伝子をプローブとしてゲノムDNAの探索と染色体局在の解明、さらには遺伝子突然変異の内容等に関するより進んだ研究が展望できるようになった。
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