研究概要 |
光化学系【II】に富んだ膜標品(桑原・村田標品)を4%のトリトンX-100で可溶化し、DEAE-トーヨーパール(650S)を用いるイオン交換クロマトにかけることによって、蛋白成分としてD-1(psbA遺伝子産物),D-2(psbD遺伝子産物)およびチトクロームb-559(psbEおよびF遺伝子の産物)のみからなり、色素成分として4〜5分子のクロロフィルa,1分子のβ-カロチンおよび1〜2分子のチトクロームb-559ヘム(いずれも2分子のフェオフィチンa当り)を含む色素蛋白質複合体を単離することに成功した。 この複合体は、プラストキノンを含まないが、定常光照射で可逆的なフェオフィチンアニオンの光蓄積の活性を示し、また、ピコ秒光パルス照射によってP-680のカチオンと515および545nmでの退色によって特徴づけられるフェオフィチンアニオンを形成し、両者が約30nsの時間(半滅期に相当)で再結合する活性を持っていることから、光化学系【II】反応中心を含むものであることが明らかになった。 D-1とD-2のポリペプチドはそれぞれ紅色細菌の光化学反応中心のL,Mサブユニットとその部分構造,特に反応中心色素(P)や【Q_(12)】と【Q_(13)】との間に介在するFe原子を結合する残基部分の構造が類似していることから、今後光化学系反応中心(本研究で得られた標品)の結晶化による構造解析の進展によって両光化学反応中心の類似点と差異が分子構造のレベルで解明されることが期待される。
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