研究概要 |
リチウム電池用の有機電解液について研究を行い、以下の知見を得た。 1.電解液の伝導度は、高誘電率溶媒と低粘度溶媒の組合せによって著しく改善された。それは、電解液中のイオンの解離とイオンの移動度によって半定量的に説明づけられた。 2.電解液の伝導度が高いもの程リチウム負極の分極は小さくなり、充放電の効率は高くなる傾向にあった。 3.ポリエーテル等ドナー性の高い溶媒はリチウムイオンに選択的に配位するため、電解液伝導度と電極特性の両方に影響を与える。特に、クラウンエーテルの添加は伝導度の向上とTi【S_2】正極の充放電特性の改善に効果があった。 4.高誘電率溶媒として、スルホランまたはジメチルスルホキシドを用い、低粘度溶媒として1,2-ジメトキシエタンを混合した系が高い電気伝導度と優れたリチウム充放電特性を与えることを見出した。 5.電解質塩の種類も電解液物性および電極の特性の両方に影響を及ぼすことがわかった。従来よりリチウム電池に用いられてきたLiCl【O_4】よりもLiP【F_6】の方が伝導度および負極特性に優れていることを見出した。 6.負極基体にリチウムと合金を形成しやすいアルミニウム等を用いると、上記リチウム負極特性の電解液組成依存性は低減され、また充放電効率のものも高くなる傾向にあった。 7.リチウム電池の電極特性が電解液組成に依存する現象は、電解液バルクのイオン構造に加えて、電極上でのイオンに吸着,表面での皮膜形成など、電極-電解液界面における構造変化から説明されることを明らかにした。 8.これらの知見から、高性能リチウム電池の電解液を開発するには、溶液基礎物性の把握が不可欠であり、それによって新しい溶媒-電解質塩の組合せが設計できるものと結論された。
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