研究概要 |
1.新しいHLAクラス【II】抗原Doα鎖とDPβ鎖の遺伝子クローンをヒトリンパ球培養細胞株(CEM)に導入してえられた形質転換細胞についてウエスタンブロッティング法によって発現しているHLA抗原の解析をおこなった。(1).この形質転換細胞に発現しているクラス【II】抗原のα鎖とβ鎖の分子量は、DQα鎖とDQβ鎖の遺伝子クローンを導入したLtk-細胞に発現しているDQ抗原α鎖とβ鎖の分子量とそれぞれほぼ同一であることがクラス【II】抗原フレームワーク抗体(クラス【II】抗原のα鎖とβ鎖を独立に認識する単クローン抗体)をもちいたウエスタンブロッティング法によって明らかになった。(2)DOα鎖とDPβ鎖の遺伝子クローンを導入したこの形質転換細胞は通常のクラス【II】抗原のα鎖とβ鎖によるダイマーはほとんどみられず、α鎖とβ鎖が細胞表面で非共有結合を形成していないか、この結合が弱い可能性が示唆された。今後、DOα鎖遺伝子クローンをDRβ,DQβ,DPβの各β鎖遺伝子クローンとの組合せで導入し、えられた形質転換細胞をもちいてDO抗原の生化学的性状と免疫応答における機能の解析をおこなう予定である。 2.昨年度分離した新しいクラス【II】抗原β鎖をコードしていると考えられる遺伝子クローン2つ(λHMCβ19,β33)の一部の塩基配列の決定をおこなった。(1).両クローンともにDQβcDNAと比較的高いホモロジーを示し、β33はDXβ鎖をコードしていることが確認された。(2).β19はクラス【II】抗原に特徴的な構造を有しているが、従来のDR,DQ,DX,DP,SX,DO抗原の各β鎖とは異なる新しいクラス【II】抗原β鎖(DVβ鎖)をコードしていることが証明された。このDVβ鎖遺伝子はβ2ドメインにコドンの欠失や終止コドンの存在が認められ、偽遺伝子であることも明らかになった。(3).各種のHLA抗原ホモ接合体Bリンパ球細胞株においてDVβ鎖遺伝子とその周辺領域に多型性が認められた。現在DVβ鎖遺伝子の全塩基配列の決定を進行中である。
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