研究概要 |
1.新しいHLAクラスII抗原α鎖をコードしていると考えられるCDNAクローンPDOα20ならびに遺伝子クローンλHMCα245の塩基配列を決定し, アミノ酸配列, ドメイン構造ならびにエキソンーイントロン構造を明らかにした. その結果このDOα鎖は典型的なクラスII抗原の構造を示すが従来のDR,DQ,DP抗原α鎖とは異なる新しいクラスII抗原のα鎖であることが証明された. またDOα鎖遺伝子周辺は, DRβ,DQβα,DPβ各遺伝子周辺に比較して遺伝的多型性が乏しいことが明らかになった. 2.DOα鎖とDQβ鎖ならびにDOα鎖とDPβ鎖の遺伝子クローンをT,Bリンパ球系の細胞にリポソーム法により導入した. その結果形質転換細胞はHLAクラスII抗原フレームワーク抗体を用いたFITC法により検出される抗原を膜上に新しく表現していることが見いだされた. またこれらの形質転換細胞を刺激細胞としたMLRの結果, これらの形質転換細胞にMLR活性は見められなかった. さらにウエスタンブロッティング法によってこれらの形質転換細胞に発現している抗原の性状を解析したところα鎖とβ鎖のダイマー状の分子の沈降は見られなかった. 3.新しいHLAクラスII抗原β鎖をコードしていると考えられる遺伝子クローンλHMCβ19を分離し, その構造解析を行った. このDVβ遺伝子にはコドンの欠失や停止コドンの存在するβ2ドメインのほか, 結合ペプチド, 膜結合領域及び細胞内領域に相当するエキソンのみが存在することから, 偽遺伝子であることが判明した. またβ2ドメインの塩基配列は, DQβ,DXβと比較的相同性が高いがこれまでに分離されているクラスII抗原β鎖遺伝子とは異なる新しいクラスII抗原β鎖遺伝子であることが証明された. さらにDVβ遺伝子はDXαとDQβの間に存在しDXαの15kb±流に位置することから, DVβの多型性はDXαの多型性と関連が認められた.
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