研究概要 |
オレフィンーメタテシス反応(2RCH=CHR´【←!→】RCH=CHR+R´CH=CHR´)類縁の反応として知られるアセチレンーメタテシス反応(2RC≡CR´【←!→】RC≡CR+R´C≡CR´)は有機合成の新しい合成手段として興味のある反応であるが、今までのところ後者は前者ほど広範囲に検討されていない。61年度前半は、前年度にひき続いてヘキサ(tーブトキシ)ジタングステン(【I】)を触媒とする、3ーヘプチンのセルフーメタテシス反応、2-ヘプチンと3-ヘプチン、3-ヘキシンと5-デシンなど2種類の内部アルキンのクロスーメタテシス反応を検討した。その結果、これらのアルキル置換アセチレンの室温でのメタテシス反応の速度は、きわめて大きく、アセチレンと触媒(【I】)との混合直後に、三重結合に結合するアルキル基の炭素数に関係なく、統計的平衡混合物を与えることが明らかとなった。この事はアセチレンーメタテシス反応によってアルケンのアルキリジン交換が容易に行なえる事を意味する。61年度後半からは官能基を有する置換アセチレン化合物のメタテシス反応を検討するための基質アセチレンを合成した。合成したものは左記のペンタ-1,4-ジイン-3-オール類(【II】)、ペンタ-1,4-ジイン-3-オン類(【III】)とこれから誘導しうるピラゾール化合物(【IV】)、1,2-ピロン類(【V】)および1,3-ブタジイン(【VI】)である。これらアセチレン化合物のうちアルキル置換アセチレンより電子貧窮アセチレンと考えうる【III】(R=【CH_3】)は、触媒(【I】)による3-ヘプチンのセルフーメタテシス反応を禁止しこの反応の触媒毒となる事が判明した。今後これ以外のアセチレンを合成すると共に、その反応を検討する。
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