研究概要 |
世界の典型的古代型湖として知られている琵琶湖には湖底に厚さ1,000米に達する堆積物を残しているだけでなく、日本の他地には見られない珍しい陸水生物の棲息でしられている。琵琶湖古環境実験施設は昭和57年〜58年に一年間を掛けてその湖底を1,400米掘削し、日本各地の大学研究者による学際的研究によって組みあげられた古環境変遷史を各種、学術新法に発表してきた。しかし上記の陸水生物の起源、遷移については施設事業の範囲外であるので、未着手のまま今日に至っている。この陸水生物の起源としては(1)アジア大陸からの移動(2)氷河気候下に琵琶湖に棲息、現在までの遣存(3)海洋より琵琶湖に侵入、現在までの遺存が考えられるがこの中最も難しい問題はアジア大陸から如何にして琵琶湖へ到達したかの解明である。この難問を解くために今般本研究代表者は、琵琶湖が曽て瀬戸内海地域まで拡っていたとの仮説をもとに中国大陸〜乾国当時の東シナ海〜九州北半〜乾国当時の瀬戸内海〜琵琶湖の広大な地域に古琵琶湖が如何なる証拠を堆積物中に遺しているか、またその年代はどの位の古さであるのかの研究にとり組んだ。それと同時に氷期の気温低下量と氷河性海面変動との関係を他の日本列島地域について確めるため東北地方にまで足をのばし、寒冷気候下の植物化石含有層の調査を行った。その結果、ユースタチックな海水面低下に伴って、中国大陸より阿蘇火山噴出前の中部九州の海峡を経て、瀬戸内海から琵琶湖に至る淡水路の存在が推定されるに至った。しかしその過程の詳細は、瀬戸内海海底で象化石を多〓する層準までのボーリングコアを持取しそのコアの多角的分析をすることが必要である。
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