本研究所は、小都市における宗教の活動状況を把握するために、総合的な観点からの宗教調査を行った。とくにこまで調査されることの少なかった九州地方の実態に焦点を当てた。その結果、次のような点が明きらかとなった。 1.まず、こうした小都市における宗教状況についての研究実態であるが、一般に大都市及び農村部における同様の研究に比較してきわめてわずかであるということが明らかになった。小都市こそ、都市化現象や人々の生活の変化が明瞭に観察できるところであることを考えれば、こうした研究にはもっと力が注がれるべきである。 2.従来の研究においては、関東や関西に本部を持つ教団に関するものが中心であったが、九州とくに北九州には多くの新宗教の本部があり、新宗教の活動は盛んであると言ってよい。とりわけ、都市部においてはさまざまな新宗教の布教活動を行っていることが分かった。 3.神社を中心とした宗教活動としては、各種の祭の復活が注目される。祭の形態は、伝統的なものもあるが、地方で地方の各種団体との密接な提携のもとになされるものも目立ってきた。これは、新しい形での祭志向が顕著になってきたことをあらわしていると考えられる。 4.最近に於ける情報化の急速な信仰の結果、大都市と小都市との間で、布教形態にあまり差が見られなくなってきている。一つには宗教団体側が平均化された布教方法をとっているということが挙げられ、もう一つには、宗教とくに新宗教の場合は、他の教団の布教方法をまねる度合いが多くなってきたことが考えられる。
|