本研究は、[非]類似性の総合的判断に関して、理論的考察と実験結果により、新しい知見を得た。これに基いて、[非]類似性判断の計量心理学的モデルを構築し、そのモデルのパラメータを推定する統計的手法を開発し、その手法の評価を行なったものである。 本研究の第一段階では、[非]類似性の総合的判断は、刺激の知覚過程、特徴認知の過程、[非]類似性の判断過程が相互に密接に関連することを見出し、次の知見を得た。1)知覚的関係としての[非]類似性と、認知的関係としての[非]類似性は様相が異なる。2)[非]類似性判断は、認知水準と文脈効果に依存する。3)認知水準の高い刺激と低い刺激が混在した刺激群に関しては、各水準毎の刺激の頻度分布が、[非]類似性判断に影響する。4)上記1)〜3)の諸相が明確に区別できる状況よりは、諸相が密接に関連する状況が多い。 以上の結果に基いて、本研究の第二段階では、上記の諸相の一部あるいは全部が関連した一般的状況に対して、[非]類似性の総合的判断を説明するモデルを構築した。このモデルのパラメータを推定する多次元尺度構成法を開発した。その具体的アルゴリズムは、準ニユートン法と乗数法を組み合せた非線形最適化法を利用している。この新手法を評価するために、最初にモンテカルロ.シミユレーシヨンによって統計的なテストを行ない、データ解析法としての実用性を確認した。次に現実の心理データの分析に、このモデルと手法を応用し、上記の諸相に対応した種々の分析を行なった。これらの応用例によって、本研究の目的を達成したことを実証した。
|