研究概要 |
本研究では、妊娠期にアルコール水溶液を飲用させた母ラットから生まれた子ラットについて、その行動及び生理特性を検討することを目的とした。行動については活動性を中心に検討し、とくに長時間にわたる活動量を測定することによって、明暗条件による活動量の変化,活動の日内リズムの形成過程を検討した。生理特性については脳波の基礎律動を検討の対象とした。これらの検討に際し、とくに成長過程の発達的変化を重視した。 1.活動量;活動量の長時間にわたる測定方法を検討し、ラットケージ・パルス発生器・インターフェースから成る活動量測定装置を自家開発し、パソコンを用いることによって長時間活動量測定の自動化及びその統計処理を可能にした。これにより幼若ラットの48時間連続記録を行い、48時間活動量経過図,明暗交代条件下における活動量の変化等に及ぼす胎生期アルコール投与の影響について検討した。その結果とくに、活動期である暗条件下での活動量が、アルコール群では有意に多い等の新しい知見を得て発表した。 2.活動の周期性;上記の活動量測定装置を用いて、21日間にわたる活動量の連続測定を行い、活動リズムの形成過程について検討した。統制群では記録開始5日目以降、明暗条件に一致した活動量の日内リズムが形成されたのに対して、胎生期に低濃度のアルコール水溶液を投与した群では、活動の日内リズムの形成が著しく遅れるという重要な知見を得た。 3.脳波;出生後5日令から30日令における幼若ラットの脳波の基礎律動について検討した。胎生期アルコール投与により特殊な波形あるいは異常波は見られない。しかしパワスペクトル分析による睡眠時脳波の解析結果から、統制群では徐波成分が日令に伴い明らかに順次増加するのに対して、胎生期アルコール投与群では不規則な変化を示し、睡眠時脳波の発達,睡眠一覚醒周期形成の障害を示唆ある結果を得た。
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