障害児、とくに聴覚障害児と口蓋裂児について、言語発達の過程を、健常児の言語発達の過程との比較において、検討した。健常児の場合、生まれて最初の1〜2年の間に、親とのかかわりをとおして、親や自分に対する情動的認知を発達させ、また、自分の手や身体を使って外界に働きかけることをとおして、外界の物についての動作的認知を発達させる。そして、このような情動的・動作的認知の発達を基盤にして、ことばを発達させる。 聴覚障害児の場合も口蓋裂児の場合も、親や先生といっしょに、戸外や室内で楽しく遊ぶようにした。戸外では、犬と遊んだり、ちょうちょを追いかけたり、行き来する自動車を道ばたや歩道橋の上からじっとながめたりした。室内では、男児は主に玩具の自動車を使って、戸外で経験した自動車の行き来や駐停車の様子を再現し、女児は主に、ままごと遊びの玩具を使って、日常生活の料理や食事の様子を再現して遊んだ。このような、戸外では身体をいっぱい使い、室内では玩具を使って〓〓遊びをすることにより、子どもは、親や先生や自分に対する情動的認知を発達させ、また、戸外での動物との遊びや室内での玩具を使う遊びをすることにより、外界の物に対する動作的認知を発達させた。そして、このような情動的・動作的認知の発達を基盤にして、ことばを使い始め、さらにことばを発達させていった。 従来の障害児に対する言語指導としては、絵カードなどの教材を使ってことばを条件づけ的に訓練することが多かった。それに対して、われわれは、健常児における言語発達の研究をもとにして、どのような障害をもつ子どもであっても、まず、ひとりの子どもとして、健常児と同じような生活経験をさせることにより、まず、情動的・動作的認知を発達させ、それを基盤として、言語を発達させてきたのである。
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