研究概要 |
成果に関しては、別紙報告書に示されるが、ここでは特に61年度に得られた結果を中心に述べる。 人の「恐れ」や「危険」の認知に関し、幼稚園児・小学校児童から、成人(大学生)に至る875名を対象に質問紙調査を実施し、その結果の分析考察を行ない、次の様な結果を得た。 1.「恐れ」と「危険」に対する感じ方を比較すると、年齢・性別とは関係なく、「危険」の感じ方の方が強く表わされている。 2,「恐ろしいもの」と「危険なもの」は、一見同じものの様に考えられるが、詳細にこれを分析・考察すると、「恐ろしさ」は、気味の悪さといった情緒面において、「危険」の感情は、怪我や死を招来する様な客観的な対象に対して生じていると考えられる。 3.年齢段階的に考察すると、小学校中・高学年生の男児は「恐ろしさ」や「危険」に関する感情が稀薄で、いわゆる無鉄砲時代の片鱗がそこに存在すると考えられる。 4.「危険」や「恐ろしさ」の感じ方の男女差を考察すると、小学校中学年段階においては、男児がこの面での感じ方が弱いが、以後年齢の増加に伴ってその評価は低下する傾向が見られる。一方女児にあっては、年齢が進むにつれて、「危険」と「恐ろしさ」の感情の差の減少が見られる。この事実は、「恐ろしく」ないものは「危険」でない、という思考パターンの可能性も考えられ、女性の大胆極まりない行動の遠因の一つとなっているのではないかと思われる。 今後に残された課題としては、潜在的な危険や、主観的危険に対する教育・指導を如何に行なうかの方途を見出すこと、が考えられる。
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