研究概要 |
子どもが新たな概念や知識をどのようなメカニズムのもとに獲得し既有知識を修正,再構造化していくのかの問題は認知発達心理学の主要テーマの一つである。本研究ではこうした知識の深まりや広まりに異なる視点や知識や経験のぶつかり合いを積極的に経験したり自由に具体物を操作吟味したりする経験が不可欠であると仮定する。そして、この仮定のもとに社会的相互交渉事態(SIS)を設定し、具体的事物の用途や機能および因果性や問題構造メカニズムについて考えさせ、その中で知識構造や課題構造に対するモニタリングの仕方がどのように異なるか、何が創造的認識の深まり広まりの主原因になっているかを質的,量的側面から探求することが主目的であった。理論的研究ならびにSISに関する従来の研究のレビューを踏え4つの実験を行った。 その結果,[1]SISの訓練は創造的認識の深まり広まり(CC-WD)に効果的,特に思考の流暢性や独創性に効果的であり、また見えの世界だけでなく隠された世界の因果性の認識をも高める(実験【I】),[2]SISの中には(a)結果や評価を離れ自由に言える雰囲気,(b)異なる視点との出会い、(C)自己生成した考えや視点に対する他者からの批判や評価(フィードバック)を手がかりに再帰的に吟味検討するラリー,といった認知的要因が内在しているが、CC-WDのためには特に(c)要因が重要である(実験【II】),[3]SISの中で(C)要因の活性化が維持され各被験者が納得できる状況では、教示誘導される低水準の被験者のみでなく教示誘導する高水準者にもCC-WDに変化がみられる(実験【III】),知識や経験の水準が異なる高低のペア間でSISを行なう場合には、高水準者が課題や低水準者への働きかけにおいて一定の距離を持ち、モニタリングを積極的に行なう役割を取った時に最も促進なCC-WDが両者にみられる(実験【IV】)ことがわかった。
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