1.珠算領域における熟達化については、【i】)縦断的な追跡を行なったが、脱落率が高く、安定した結果は得られなかった。【ii】)より熟達した段階の競技者と比較するため、珠算経験の少ない短大生、大学生にも6進法および12進法での計算の能力をみる課題や、簡易化方畧の利用をみる課題を与えた。前者の課題では、特殊な(約束に従った)算盤を与えたときも、与えなかったときも、珠算熟達者の方がすぐれているという結果はみられず、彼らのもつ技能が柔軟性をもたないことが確かめられた。また、簡易化方畧の使用は短大生では稀で、大学生ではかなりの頻度であったが、正答を導くかに関しては必らずしも有効とはいえなかった。熟達者はいずれも簡易化方畧をまったく考慮せず、その利用可能性を指摘されたさいにも無関心であった。これは彼らの計算技能に関する信念にもとづくものであろうが、その信念には合理的な根拠がある、といえよう。 2.日常的生物学と比較するために、学校で多少とも体系的に生物的知識を得ていると思われる小学2・4・6年生に対して、さまざまな動物およびそれ以外の若干の事物に対して属性判断を行なわせるとともに、その分類を求めた。小学2年生でも同一の分類カテゴリに分けた動物に対しては同一の属性判断をする傾向があり、彼らの判断がある程度までカテゴリにもとづくものであることが示唆された。しかし、学年がすすむにつれ、分類自体がより正しくなっていくとともに、カテゴリ内の首尾一貫性も増していく傾向が認められた。また、人間との類似により人間のもつ属性を付与しようとする傾向は低学年に顕著であった。日常的生物学でもカテゴリを用いないわけではないが、その利用は学校教育により促進されるといえよう。 3.ピアノ演奏における熟達化について、、昨年度の資料を詳細に分析し熟達化の諸相に関しいくつかの知見を得た。
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