研究概要 |
1)これまで数年にわたって本研究者は、エリザベス朝英国の一般文化に照らして、バラッドとくに"broadside ballad"とシエイクスピア劇の関係をみてきたが、昭和61年度は、"traditional ballad"がシエイクスピアの悲劇、なかでも『リア王』にどのように取り上げられたかを調べ、劇構成の中での位置づけと意味づけを行なった(昨年度末添付の紀要論文参照)。 2)昭和61年4月西独ベルリンにおける第三回世界シエイクスピア会議(World Shakespeare Congress)に、発題者として参加、シエイクスピアの日本的受容の現況につき、『リア王』を中心に論文を提出した(昨年度報告書に添付ずみ)。そこでとり上げた黒沢明監督の映画『乱』と『リア王』をめぐって、原作の翻案と解釈の問題が、トロント大学ホーニガー教授、リバプール大アン・トムプソン女史、ケニス・ミユア教授らによって、受けとめられ、討論も実りの多いものであった。 3)もうひとつ当初の研究目標であったシエイクスピアの「詩作品」におけるネオプラトニズムの要素と音楽的秩序観については、詩作品「不死鳥と,雉子鳩をとり上げて論じた(フエリス女学院大学紀要22号、添付論文参照)。この作品の音楽的構成と内容に加えて、じっさいに作曲された音楽(1984年発表、ジョン・ジュベール作曲の室内楽)についても言及・紹介した。
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