本研究はその最終目標として、多角的な観点からのRoman de Renartの総合的研究の完成を目指し、以て中世フランス文学の一端の解明を図らんとするものである。その過程においては、最低次の三つが必須不可欠な部門別の研究と見なされる。即ち、語学的研究、文献学的研究、及び文学的研究である。当年度においてはその第一部門である語学的研究に取り組み一応の成果を挙げることができた。研究実施計画にも記したように、語学的研究の内容は具体的には、語彙論、統辞論、文法論、文体論等の多岐にわたるものであるが、基礎資料の充実と比較的に着手が容易と考えられた語彙論の分野に関しては一応当該年度内に於ける研究成果をもって、更に若干の修正、統一を行えば学界待望のLexique du Roman de Renartとして刊行することも可能である。 他の分野の語学的研究に関しては、完了年度までに最終検討を加える段階にまでは至らなかったが、近い将来他の部門別研究に着手する際には、是非その関連研究として取り扱っていきたいと思っている。 語学的研究の遂行上、期せずして得られた他部門に関連した成果も特記するに価するものである。その最たるものは、何と云っても、研究代表者によるBruxellesのBiblioth【e!`】que Royale Albert Premierに所蔵されていた未公開資料の発見である。 従来の研究成果は、当該年代分も含めて、幸運にも国際学会での発表等において好評を博する事が出来、国際的に権威のある学術誌にも書評を掲載されるに至っている。 当該年度に得られた研究成果を踏み台として、更に新しい分野への研究へと発展させていけるよう努力する決意である。
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