研究概要 |
1 昨年度より継続中のテーマである「サヴィニーの法人論をめぐる諸問題1においては、クリュル,ゲンナーおよびティボーを取り上げ、かれらの法人論をサヴィニーのそれと対比させ考察することにした。具体的には、入会地の分割事件に、かれらの法人論(ゲマインデ論)がどのように応用されるかによって、その自然法観,法源・法解釈論,市民社会論がそれぞれ独自の様相をもって浮び上ってくるのであり、また対置的方法によって、サヴィニー理論の特色も鮮明になると思われる。現在、連載の第二部まで発表済。 2 この研究を通じて、法華解釈論を独立して本格的に考察すべき必要を痛感した。そこで、既往の研究とは異なり、Hermeneutikの伝統をふまえ、自然法,前期着通法の理論を直接の資料にあたって検討した結果、いわゆる文法的解釈,論理的解釈,類推の観念がこの時期に重要な変化をとげていることを発見し、サヴィニー理論がドイツ近代法論の形成にどのような意味をもっているか、定説を修正する見解を形成することができた。これは来年度半ばに公刊予定である。 3 またこれまで未公開の資料、1809年のサヴィニー『法学方法論』1812年以降のパンデクテン講義市説の原稿を翻刻した。これは従来の方法論形成史に重要な寄与をなしえたと思う。また『サヴィニーにおける歴史と体系』を口頭発表した。 4 最後に、「モンゲルベッサーの共和国法典論」を執筆した。これは、プロイセン一般ラント法批判であり、カント的実践哲学の原理を徹底的に実定法論化したドイツの初期市民法論の一例である。市民法原理がドイツ的状況の中で具体的にどのような形姿をとって現われるかを明確にするものである。これは、本年9月ごろ公刊される。
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