本年度は、労働力を男・女の性別及び若年(-24才)、中年(25-55才)、老年(55才以上)の6つのクラスに分けて、それぞれの雇用・失業・非労働力の三つの状態間の移動に関する統計を作成し、それに基づいて、各クラスにおける、VARモデルの推計を行った。 そこで明らかになったことは、いずれのクラスにおいても非労働力状態にある人口は、他の状態から及び他の状態への移動が小さく、ほぼ外生的にふるまうと考えられること、第二に、失業状態からの移動に関して、5-6ヶ月目にかなり目立った動きがあり、失業保険給付と密接な関連が推測出来る。 第三に、求人求職倍率等の需要要因は、全体として雇用のみならず失業にも正の影響を与えており、非労働力からの移動が需要要因によりある程度影響をうけていることを示唆している。 第四に、需要要因に強い影響があるのは男女共に若年、老年層であり、中核労働力の状態間移動は需要変動に大きく影響されないことが解った。このような、定型化された事実を基に、現在、理論モデル(別掲論文)に沿ったシミュレーションモデルを開発中である。 その骨格は、6つのクラス毎に、経年変化による労働生産性のプロファイルと労働市場におけるマッチングに要する期間(失業)を決定するいくつかのパラメターを与えることで動学経路を解くことの出来る、長期動学モデルである。 上記のシュミレーション作業は、新しいパネルデータに基づいた研究報告等も考慮して、いくつかの修正を余儀なくされたため、予定より長期にわたることになったが、今年8月末には、作業を終了し、別記の研究会で報告の予定をしている。また、研究全体の概要は、別掲の著書の一章として発表する予定である。
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