有界平均振動をもつ関数は、Poisson積分を利用して特徴づけられるが、これに類する現象が、より広い特異積分(別添「研究成果報告書」第1部参照)に対しても成立することが判明した。 とくに、Fejer核を利用することができるので、三角多項式の枠内での特徴づけが可能になる。この事実は(Fefferman-Steinの双対定理を用いれば利用しなくてもすむが)、有界平均振動をもつ関数の空間におけるBernstein型不等式の証明に利用することができる。 これは、研究の中心課題に直接結びつく成果である。 分担課題「関数近似論」については、周期関数の三角多項式による近似(渡利担当)、連続関数の正値指数型作用素による近似(佐藤担当)についてそれぞれ若干の知見が得られ、前者は早稲田大学理工学部談話会で、後者は1986年度「実解析セミナー」で発表された。 それらの内容についても別添「研究成果報告書」を参照されたい。 分担課題としては、この他に当初「作用素環論の研究」があったが、分担者羽毛田穰祐が途中で渡米したため研究組織から離脱し、この分担課題についての研究は中断のやむなきに至った。 Hardy空間の理論を関数近似論から再構成する試みも成功したかに見えたが、不完全な部分のあることが東北大学金子誠氏によって指摘された。その欠陥は目下のところ克服されていない。
|