研究概要 |
準安定な超伝導状態にある微粒子は磁場,温度の相図から予想されるように、「磁気的」「熱的」2通りの過程で準安定超伝導状態から常伝導状態へ非可逆的に相転移する。理論的計算によると、粒径20〜30μmの金属粒子に対しては磁気的な転移が大きく効くのでモノポールの検出に応用できる。また、粒径1〜5μmでは熱的な転移が効くので通常の荷電粒子の検出に使い得る。そこで、まず実際そのように粒子反応物質として使えるかどうか原理確認を行う為に、準安定超伝導状態に関する基礎データを実験的に求める。次いで3cm×3cmの検出器を試作することが2年間にわたる目的であった。 前年度では、購入した真空ポンプに自作の圧力調整機構を取り付け、1.5〜4.2Kの間で精度10mKの温度制御を行えるようにした。また超伝導磁石の入荷に伴い磁場掃引用の電源を製作し、この超伝導磁石の磁場分布をはじめとする各種性能の測定を終了した。この超伝導磁石とSQUID磁化測定装置とを組み合わせて超伝導金属微粒子(鉛,錫)の磁場,温度の相図作りに取り掛かった。 最終年度の今年は引き続き相図作りを行っている。試料移動機構の振動雑音によってSQUID磁化測定装置が動作不能となるが、最近ようやくその不動作を克服し、データが取れるようになった。相図作りと並行して、小型検出器の製作を進めている。温度,磁場を制御しながら検出器に関する基礎データをとるためのクライオスタットは完成している。後2ヶ月程で、検出器は出来上がる予定。理論面では、半無限の場合のGinzburg-Landau方程式の数値解法を確立し、種々のパラメーターでの準安定超伝導状態の数値計算を終了した。今後実験結果との比較検討を行う。
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