研究概要 |
1.ミグダルくりこみ群(RG)の方法によって有限温度の格子ゲージ模型の相構造を調べた。この方法によれば大きな格子系も扱うことができる。様々な裸の作用から出発してもRG変換をくり返すことによってuniqueなくりこまれた作用を得る。即、作用は無限次元結合定数空間の1つの点で表わされ、ミグダルRG変換は出発点によらず1つのuniqueなrenormalized trajectory(RT)上に収束させることが分る。これによって相構造を調べることができる。この方法を有限温度に拡張するためT=0における等方変換を時間・空間非等方な変換におきかえた。ゲージ群をSU(2)からSU(3)へ拡張する仕事を行った。群の指標は通常2つの多項式の商の形で支えられるが、分母のゼロ点があるためミグダルRGを実行するには1つの多項式で表わしておくことが必要である。SU(3)群についてまずこれを実行し、これを用いてT=0,T≠0のQCDの性質を調べた。RG flow diagramは明瞭な相転移を示す。内部エネルギーεはT=小でゼロ,T=大で有限となりε【T^(-4)】はT→大で一定値に近づく。これらはdeconfinement転移を意味しステファン・ボルツマン則の予想と一致することを示す。フェルミオンを含む系の扱いは今後の課題として残す。 2.QCDで開発された方法を量子重力に適用した。高次微分を含む重力を0(4)対称な変数でかく。これをSU(2)XSU(2)ゲージ理論の形に書き直すことにより真空は自発的対称性の破れた状態になりアインシュタイン項はその結果として誘起されることが分った。 3.変域が限られた一般化座標を含むラグランジアン系の量子化を経路積分で行う。Faddeev-Senjanovicの方法によって制限条件をδ-関数でもちこむことによってハミルトニアンを求め、量子力学系を得ることを、D次元球面上の問題を例にとって示した。
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